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鳳仙寺(桐生市)

(ほうせんじ)

戦国の祈りを今に伝える東毛屈指の名刹

鳳仙寺は、群馬県桐生市梅田町にある曹洞宗の寺院で、山号を「桐生山(きりゅうざん)」と称します。本尊は釈迦如来。戦国時代に創建されて以来、四百五十年以上にわたり法灯を守り続けてきた、東毛地区を代表する古刹です。由良氏の菩提寺として知られ、歴史的・文化的価値の高い建造物や寺宝を数多く伝えています。

戦国武将・由良成繁公による創建

鳳仙寺は、天正2年(1574年)、桐生・太田・館林を治めた戦国武将・由良信濃守成繁公によって建立されました。成繁公は前年に桐生氏を破り桐生領を掌握し、隠居後に桐生へ入部すると、自らの菩提所として壮大な伽藍を整えました。名田百石余とともに勅使門を備えた堂々たる寺院を築いたことからも、成繁公の篤い信仰心がうかがえます。

開山は朝廷より勅賜号・禅師号を授かった高僧であり、その後も黙之宗草禅師や大円門鶴大和尚など、学徳兼備の名僧を輩出しました。三世大円門鶴大和尚は大本山永平寺二十世住持に晋山するなど、宗門においても高い評価を受けています。最盛期には四十人を超える雲水が参禅修学する大道場として栄えました。

幾多の危機を越えて守られた法灯

創建から五年後に成繁公が逝去し、さらに天正18年(1590年)には小田原合戦の影響で由良氏が常陸牛久へ転封となるなど、鳳仙寺は幾度も存亡の危機に直面しました。しかし、徳川家康公による寺領安堵などにより寺運は保たれました。

江戸時代には宗門内での功績が認められ、十一世の代に「常法幢・別格地」の寺格を授かります。これは大本山に次ぐ格式であり、鳳仙寺が地方寺院として極めて高い地位にあったことを示しています。明治維新期の廃仏毀釈の波も乗り越え、今日まで法灯を絶やすことなく受け継いできました。

火災を免れた奇跡の文化財群

鳳仙寺の大きな特徴は、創建以来一度も大きな火災や災害に遭っていないことです。そのため、室町期から江戸期にかけての建築様式や貴重な古文書、美術工芸品が数多く残されています。質量ともに県内屈指といわれ、「文化財の宝庫」と称される所以です。

本堂 ― 市内屈指の大規模方丈建築

本堂は桐生市指定重要文化財で、享保11年(1726年)以前の建築とされています。桁行9間、梁間8間の八室構成による大規模な方丈形式で、市内に残る木造建築の中でも最大級の規模を誇ります。入母屋造・銅板葺の堂々たる姿は、曹洞宗本堂の伝統様式を今に伝える貴重な存在です。

内部には太い柱と梁が巡らされ、荘厳な内陣には釈迦三尊仏が安置されています。昭和の改修を経ながらも、創建当時の面影を色濃く残しています。

山門 ― 禅宗様式の壮麗な楼門

宝永元年(1704年)建立の山門も、市指定重要文化財です。三間一戸・入母屋造の楼門で、均整の取れた禅宗様式の建築美を誇ります。門内には増長天・持国天が安置され、十二支を彫刻した蟇股や雲水龍の彫刻など、精巧な意匠が随所に施されています。県内でも数少ない本格的な扇垂木を備えた楼門として高く評価されています。

輪蔵と梵鐘

天明3年(1783年)建立の輪蔵は、中心の柱を軸に回転する八面の経架を備え、延宝7年版行の鉄眼版一切経を収めています。また、寛永18年(1641年)鋳造の梵鐘は市内最古のもので、現在もその歴史を静かに物語っています。

釈迦三尊仏と豊かな寺宝

本尊は釈迦牟尼如来で、普賢菩薩と文殊菩薩を脇侍とする釈迦三尊仏です。創建当初から安置される古仏であり、鳳仙寺第一の寺宝といえます。そのほかにも仏画、彫刻、古文書などが多数伝えられ、桐生や群馬県の歴史を知る上で欠かせない資料群となっています。

四季に彩られる静寂の霊地

寺域は豊かな自然に囲まれ、春はツツジ、夏は深緑、秋は紅葉、冬は澄んだ静寂と、四季折々の美しさを見せます。唐人白山の「鳳凰飛舞仙人遊楽之霊地也」にちなみ寺号を鳳仙寺とし、瑞兆により山号を桐生山としたと伝えられています。まさに鳳凰が舞い、仙人が遊ぶと称されるにふさわしい別天地です。

由良成繁公墓所と歴代住職の廟所

境内には、創建者である由良成繁公の墓所が静かに祀られています。戦国の動乱を生き抜き、桐生の礎を築いた武将の菩提を弔うこの場所は、歴史愛好家にとっても重要な史跡です。また、歴代住職の廟所も整然と並び、幾世代にもわたり法灯を守り続けてきた僧侶たちの歩みを今に伝えています。

墓域全体は杉木立に囲まれ、静謐な空気に包まれています。訪れる人々は、戦国の歴史と禅の精神が重なり合う独特の空間を体感することができます。

歴史と祈りに触れる桐生観光の名所

戦国の世に生まれ、幾多の苦難を乗り越えながら法灯を守り続けてきた鳳仙寺。由良氏の菩提寺としての歴史、常法幢・別格地の格式、そして火災を免れて伝えられた数々の文化財は、訪れる人に深い感銘を与えます。

桐生を訪れた際には、山門をくぐり、本堂で静かに手を合わせ、四百五十年の時を超えて受け継がれてきた祈りと歴史を感じてみてはいかがでしょうか。鳳仙寺は、地域の誇りであり、今もなお心の拠り所として人々を迎え続けています。

Information

名称
鳳仙寺(桐生市)
(ほうせんじ)

桐生・赤城

群馬県