神戸駅は、群馬県みどり市東町神戸にあるわたらせ渓谷鐵道 わたらせ渓谷線の駅(駅番号WK12)です。足尾銅山の歴史を今に伝える沿線の中でも、とりわけ観光地として高い人気を誇る駅であり、春には花桃、通年ではレトロな木造駅舎と渓谷美が訪れる人を魅了します。
神戸駅は、約300本の花桃が咲き誇る沿線屈指の名所として知られています。例年3月下旬から4月上旬にかけて、濃淡さまざまな桃色の花が駅構内を埋め尽くし、まるで花のトンネルのような景観が広がります。
時期が重なれば桜も同時に開花し、花桃・桜・列車が競演する風景は圧巻です。ローカル線ならではのゆったりとした時間の中で、春の息吹を感じながら写真撮影や散策を楽しむことができます。毎年開催される「神戸駅花桃まつり」には多くの来訪者が集まり、駅前広場は華やかな雰囲気に包まれます。
1912年(大正元年)に足尾鉄道の駅として開業した神戸駅は、開業当初に建てられた木造駅舎を現在も使用しています。長い年月の中で増改築が行われてきましたが、往時の趣を色濃く残す貴重な建築物です。
駅本屋やプラットホーム、休憩所などは登録有形文化財に登録されており、さらに2016年には「わたらせ渓谷鐵道関連施設群」の一部として土木学会選奨土木遺産にも認定されました。足尾鉄道開業当初からの歴史を今に伝える数少ない駅のひとつとして、高い文化的価値を有しています。
現在は無人駅ですが、地元住民がボランティア駅長として関わるなど、地域に支えられた温かな雰囲気も魅力のひとつです。
神戸駅から沢入駅までの約6kmは、沿線でも特に急勾配の区間です。草木ダムの堤体高さ(約140m)とほぼ同じ高低差を、草木トンネルを通って一気に登っていきます。
かつて蒸気機関車C12形が活躍していた時代には、この先の急勾配に備えて重連運転が行われ、神戸駅はその拠点となっていました。現在はディーゼル車両が静かに走りますが、駅構内には往時の鉄道史を感じさせる空気が今も息づいています。
神戸駅を語るうえで欠かせないのが、構内にある列車のレストラン「清流」です。これは、かつて東武鉄道日光線で特急「けごん」として活躍した1720系デラックス・ロマンス・カーの車両を活用した食事処です。
車内は当時の座席や内装をほぼそのまま残しており、まるで特急列車に乗車しているかのような気分で食事を楽しめます。行き交う列車を眺めながら味わうひとときは、鉄道ファンのみならず多くの観光客に人気です。
神戸駅では、沿線名物の駅弁も販売されています。
やまと豚弁当は、風味豊かなやまと豚を特製しょうゆダレで仕上げた人気商品です。掛け紙の裏側には沿線ガイドが描かれ、特製手ぬぐいが付くという遊び心も魅力です。
トロッコ弁当は、地元産舞茸をふんだんに使った幕の内弁当で、舞茸の混ぜごはんや天ぷらが味わえます。トロッコ列車のパッケージも旅情を高めてくれます。
神戸駅周辺には、草木ダムや草木湖、そして詩画作家・星野富弘氏の作品を展示する富弘美術館(みどり市立)などの観光施設があります。市営バスを利用すれば約10分ほどでアクセス可能です。
また、童謡作詞家・石原和三郎の資料を展示する「童謡ふるさと館」や、湖畔の宿泊施設「サンレイク草木」などもあり、神戸駅は東町観光の玄関口としての役割を担っています。
その情緒ある風景から、神戸駅は映画やCMのロケ地としても利用されています。レトロな駅舎と花桃に彩られたホームは、どこか懐かしく心に残る風景として映像作品にも選ばれています。
神戸駅は、単なる鉄道駅にとどまらず、花桃の名所・歴史的文化財・鉄道遺産・観光拠点という多彩な顔を持つ魅力あふれるスポットです。
春の花桃、渓谷を走る列車、レトロな木造駅舎、そして列車レストランでの食事体験――。みどり市東町を訪れる際には、ぜひ神戸駅で途中下車し、ゆったりとした時間の流れをお楽しみください。