赤城温泉郷は、群馬県を代表する名峰・赤城山の南麓に点在する温泉地の総称です。標高1,827.6メートルを誇る赤城山の雄大な自然に抱かれ、四季折々の風景とともに静かな湯浴みを楽しめる山あいの温泉郷として親しまれております。古くから湯治場として利用され、現在もなお、素朴で落ち着いた雰囲気の中で心身を癒やすことができる場所です。
温泉地は、赤城山南斜面の中腹、群馬県道16号大胡赤城線周辺の標高およそ900メートルから700メートル付近に広がっています。荒砥川沿いには赤城温泉や忠治温泉、粕川沿いには滝沢温泉があり、それぞれが自然豊かな渓谷美に囲まれています。さらに、標高約430メートルの赤城高原を含めて紹介されることもあり、これらを総称して「赤城南麓の宿」と呼ぶこともあります。
周辺は登山やハイキングの拠点としても利用され、赤城山観光の途中に立ち寄る温泉地として多くの方に親しまれております。夏は避暑や納涼、冬は湯治と、季節ごとの楽しみ方ができるのも魅力です。
赤城温泉郷の起源は明確ではありませんが、確かな記録としては元禄時代にさかのぼります。当時は「湯之沢温泉」と呼ばれており、後に現在の赤城温泉へと改称されました。元禄2年(1689年)には前橋藩主・酒井忠挙の書状に温泉に関する記述が見られ、利用者増加に伴い湯小屋が設けられたことがわかっています。
また、三夜沢赤城神社との関わりも深く、温泉はかつて神社の神領とされていたという記録も残っています。温泉明神を祀り、神聖な湯として管理されていた歴史は、赤城山信仰との結びつきを物語っています。
江戸時代には前橋藩の参詣と結びつき、湯汲みの神事も行われていたと伝えられています。幕末から明治期にかけては湯宿や飲食店が増え、明治10年(1877年)には宿屋が85戸、年間2,500人ほどの利用客があったと記録されています。
近代以降には忠治温泉や滝沢温泉が開湯し、温泉郷としての広がりを見せました。特に忠治温泉は1939年(昭和14年)創業で、国定忠治ゆかりの地として知られております。
赤城温泉は、江戸時代の湯之沢温泉を前身とする歴史ある温泉です。荒砥川沿いの標高約850メートルに位置し、現在は数軒の宿が静かに営業しております。
源泉は地下約180メートルから湧出し、湯量は毎分約210リットル、源泉温度は約44度。湧き出した直後は無色透明ですが、空気に触れると酸化して緑黄色から茶褐色へと変化するにごり湯となるのが大きな特徴です。
泉質はカルシウム・ナトリウム・マグネシウム―炭酸水素塩温泉で、古くは「鉄鉱泉」とも呼ばれていました。胃腸病や神経痛、リウマチ、高血圧などへの効能があるとされ、湯治場として長年親しまれてきました。
忠治温泉は赤城温泉から約2キロメートル下流、標高約700メートルに位置します。荒砥川にかかる「朝日の滝」を望む風光明媚な立地が魅力です。
泉温は約38度で、泉質は赤城温泉と同様の炭酸水素塩温泉。炭酸ガスを含む湯は体をじんわりと温め、血行促進が期待されます。国定忠治がこの地に身を寄せたという伝承が名の由来となっています。
滝沢温泉は1895年(明治25年)創業の歴史ある温泉で、粕川沿いに位置しています。茶褐色のにごり湯は炭酸ガスを含み、肌をやわらかく整えるとともに、体の芯から温まると評判です。
山あいに佇む宿は秘湯の趣があり、静養や湯治に最適な環境が整っています。自然湧出する温泉の力強さを実感できるのも魅力の一つです。
赤城高原は標高約430メートルの場所にあり、国道353号沿いに立地しています。赤城山観光の玄関口ともいえる場所で、宿泊施設も整い、観光拠点として利用されています。
赤城温泉郷の最大の魅力は、何といっても赤城山の雄大な自然環境です。春は新緑、夏は深い緑と清流の涼、秋は鮮やかな紅葉、冬は雪景色と、四季それぞれに異なる美しさを見せてくれます。
山菜料理や川魚料理など、地元の自然の恵みを活かした食事も楽しみの一つです。素朴ながら滋味深い味わいは、旅の思い出をより豊かなものにしてくれるでしょう。
日本百名山の一つである赤城山への登山基地としても利用されており、登山後の疲れを癒やす温泉は格別です。周辺には赤城神社や自然公園などの観光スポットも点在し、温泉と観光をあわせて楽しむことができます。
赤城温泉郷は、華やかな大規模温泉地とは異なり、山間に宿が点在する静かな環境が特徴です。都会の喧騒を離れ、自然の音に耳を傾けながら湯に浸かる時間は、まさに心身の再生のひとときです。
歴史と伝承を今に伝え、素朴なもてなしと良質な温泉が訪れる人を迎えてくれる赤城温泉郷。赤城山の懐に抱かれながら、ゆったりとした時間をお過ごしいただける温泉地として、多くの方におすすめできる場所です。