群馬県 > 桐生・赤城 > コロリン シュウマイ
群馬県桐生市で長年親しまれてきた「コロリンシュウマイ」は、素朴でどこか懐かしい味わいが魅力のご当地グルメです。ふっくらと丸く、もちもちとした食感。蒸したてのアツアツに特製ソースと青のりをかけていただくその姿は、一見するとたこ焼きのようにも見えます。しかし、その味わいは他にはない独特のもので、桐生ならではの食文化を感じさせてくれます。
終戦前後、駄菓子屋の一角で販売が始まったといわれ、約80年にわたり地域の人々に愛され続けてきました。移動販売からスタートし、のちに店舗を構えて約40年。2025年12月4日、設備の老朽化や材料費の高騰などの影響により惜しまれつつ閉店しましたが、その名と味は今もなお語り継がれています。
コロリンシュウマイの最大の特徴は、「シュウマイ」と名が付いていながら、一般的な焼売のように肉や魚介類を主原料としていない点にあります。主な材料は、男爵いも、玉ねぎ、馬鈴薯でんぷん、そして豚脂です。じゃがいもを丁寧につぶし、刻んだ玉ねぎやでんぷん、豚脂を混ぜ合わせ、丸く成形して蒸し上げます。
外観はつなぎ目のない団子状で、皮に包まれていません。そのため、いわゆる中華料理の焼売とはまったく異なる姿をしています。ほくほくとしたじゃがいもの風味と、玉ねぎの甘み、そして豚脂のコクが一体となり、やさしくも奥行きのある味わいを生み出しています。
「肉が入っていない」と思われがちですが、実際にはコクを出すために豚脂(背脂)が使用されています。赤身の挽き肉を使うと食感が変わってしまうため、あえて豚脂を用いるというこだわりが守られてきました。こうした細やかな工夫が、あの独特のもちもち感を支えているのです。
コロリンシュウマイという愛らしい名称は、童話「おむすびころりん」に由来しています。先代の店主が、この丸く可愛らしいシュウマイを主役に店を始めるにあたり、親しみやすい名前をと考えた末に生まれたものです。そのため、「コロリンシュウマイ」という名で親しまれている商品は、この系譜に連なるものだけといわれています。
もともとは戦後の家庭料理がルーツと考えられており、いつから「シュウマイ」と呼ばれるようになったのかは明確ではありません。しかし、日常のおやつや軽食として親しまれてきた歴史が、自然とその呼び名を定着させていったのでしょう。
桐生市は古くから織物の町として栄え、働く人々の活気にあふれていました。忙しい日々のなかで、手軽に食べられ、腹持ちのよい軽食は重宝されたといわれています。コロリンシュウマイもまた、そうした地域の暮らしのなかで育まれてきた味のひとつです。
群馬県は小麦文化が根付く地域であり、粉もの料理が豊富です。桐生うどんや焼きまんじゅうなどと並び、コロリンシュウマイもまた、地域のB級グルメとして愛されてきました。観光で訪れた人々にとっては珍しい存在でありながら、地元の人々にとってはどこか安心感のある味。それがこの料理の持つ大きな魅力です。
コロリンシュウマイは、蒸したてのアツアツをいただくのが一番のおすすめです。時間が経つと次第に硬くなってしまうため、できたてのやわらかいうちに味わうことで、もちもちとした食感を最大限に楽しむことができます。
食べ方はとてもシンプルで、ウスターソースをたっぷりとかけ、青のりを振るのが定番です。じゃがいものほくほく感とソースの酸味・甘みが絶妙に調和し、どこか懐かしい味わいを生み出します。派手さはありませんが、何度でも食べたくなる不思議な魅力があります。
持ち帰り用には蒸していない冷蔵品が選ばれることもあり、家庭で蒸し直して楽しむことができました。こうした食べ方の自由度もまた、地域の人々に長く愛されてきた理由のひとつでしょう。
隣接する栃木県足利市や佐野市にも似たようなシュウマイが存在しますが、そちらは主に玉ねぎをでんぷんでまとめ、皮に包んで仕上げるものが多く、じゃがいもを使わない点が大きな違いです。桐生のコロリンシュウマイは、じゃがいもを主役に据えていることが個性であり、食感や風味に明確な差があります。
こうした地域ごとの微妙な違いを味わい比べるのも、北関東の粉もの文化を楽しむ醍醐味といえるでしょう。
約80年の歴史に幕を下ろしたとはいえ、コロリンシュウマイは桐生の記憶のなかに確かに息づいています。学校帰りに立ち寄った思い出、家族で分け合った温かなひととき、祭りや行事で味わった懐かしい時間。多くの人々の心に、その味は深く刻まれています。
観光で桐生を訪れる際には、こうした地域の物語にも思いを巡らせてみてください。華やかな観光名所だけでなく、日常のなかで育まれた食文化こそが、その土地の魅力を豊かに物語っています。コロリンシュウマイは、まさに桐生の歴史と人々の暮らしを映し出す、かけがえのないご当地グルメなのです。