かみつけの里博物館は、群馬県高崎市井出町にある「上毛野はにわの里公園」内に位置する歴史博物館です。国指定史跡である保渡田古墳群に隣接し、榛名山東南麓に花開いた古墳時代の文化を総合的に紹介しています。約1500年前、この地に栄えた王と人々の暮らしを、豊富な出土資料や精巧な復元模型を通してわかりやすく学ぶことができます。
5世紀後半、榛名山の東南麓一帯には強大な力を持つ王族が存在していました。現在も残る保渡田古墳群(八幡塚古墳・二子山古墳・薬師塚古墳)は、その王たちの墓と考えられています。当時この地域は「車(くるま)」と呼ばれ、のちに「群馬」へと名を変えました。群馬県の名の由来にもつながる、歴史的に重要な土地なのです。
また、この地域では浅間山や榛名山の噴火により大量の火山灰が降り積もり、古墳や集落、水田の跡が良好な状態で保存されました。そのため、当時の社会や生活の様子を具体的に復元できる貴重な資料が数多く発見されています。
館内の常設展示は、榛名山麓の古代文化を9つのテーマで紹介しています。
縮尺500分の1で再現された巨大な社会景観模型を中心に、古墳・集落・水田が広がる当時の風景を立体的に紹介します。解説映像とあわせて観覧することで、時代背景を理解しやすい構成となっています。
三ツ寺Ⅰ遺跡は、日本で初めて確認された豪族の館跡です。幅約30メートル、深さ約4メートルの堀に囲まれた壮大な邸宅跡からは、当時の権力構造や生活の一端がうかがえます。復元模型や出土品を通して、王の暮らしに迫ります。
八幡塚古墳の築造過程を再現した模型では、古墳づくりに関わった人々の労働や組織力、技術体系を学ぶことができます。巨大な前方後円墳がどのように築かれたのか、その工程を具体的に知ることができます。
火山灰に覆われたことで保存された水田跡からは、細かく区画された農地の様子が明らかになりました。復元模型では、当時の農作業や集落の構造を視覚的に理解できます。竪穴住居や祭祀の場の再現展示もあり、古代人の生活の息づかいを感じられます。
日本最古とされる金製の飾履(かざりぐつ)など、朝鮮半島との交流を示す資料も展示されています。古墳時代の群馬が東アジア世界と深く関わっていたことがわかります。
人物や動物の埴輪は、単なる装飾ではなく、王の葬送儀礼や精神世界を表現したものと考えられています。狩人や猪、武人などの埴輪群像からは、当時の社会や信仰の姿が読み取れます。
博物館の外には、復元整備された八幡塚古墳や二子山古墳が広がっています。特に八幡塚古墳では、人物・動物埴輪の復元群像を見ることができ、後円部には舟形石棺の実物展示施設もあります。実際に古墳を歩きながら見学することで、展示室で得た知識がより深まります。
博物館では、歴史講座や子ども向け古代体験教室、「かみつけの里古墳祭り」など、多彩なイベントが開催されています。体験棟では埴輪づくりに参加できる機会もあり、学ぶだけでなく体感する歴史教育の場となっています。
館内にはミュージアムショップやライブラリも備えられ、関連書籍やオリジナルグッズの購入も可能です。
上毛野はにわの里公園は、高崎市井出町および保渡田町にまたがる、総面積約12.9ヘクタールの広大な歴史公園です。榛名山を望む開放的な景観の中に、古墳や博物館、文学館などが点在し、自然と歴史が融合した文化空間を形成しています。
公園の中心をなすのが、昭和60年に国の史跡に指定された保渡田古墳群です。5世紀後半から6世紀初頭にかけて築造された三つの大型前方後円墳――二子山古墳、八幡塚古墳、薬師塚古墳――が、約30年ほどの間に順次築かれました。
特に八幡塚古墳は発掘調査成果に基づき、1500年前の姿に復元整備されています。墳丘には円筒埴輪が並び、内堤の一角には人物や動物の形象埴輪群像が再現されています。後円部には舟形石棺の実物を見学できる展示施設があり、当時の埋葬の様子を具体的に知ることができます。
公園内には、考古学を学べるかみつけの里博物館のほか、群馬県を代表する歌人・土屋文明の業績を顕彰する群馬県立土屋文明記念文学館があります。文学館では、文明の作品や資料の展示、企画展などが行われ、地域文化への理解を深めることができます。
さらに、園内には土屋文明歌碑や詩人・山村暮鳥の詩碑も設置されており、歴史だけでなく文学散策も楽しめる点が特徴です。
上毛野はにわの里公園には、休憩棟や埴輪工房、埴輪窯などの体験施設も整備されています。埴輪工房では一般参加型の埴輪づくり体験が行われることもあり、古代文化を身近に感じられます。広々とした芝生や遊歩道は散策にも適しており、四季折々の自然を楽しみながら歴史に親しむことができます。
この公園は、単なる史跡保存の場にとどまらず、古代の景観を体感できる「生きた歴史空間」として整備されています。榛名山麓の穏やかな風景の中で古墳を眺めると、かつてこの地を治めた王族や人々の営みが身近に感じられるでしょう。
高崎駅から群馬バス榛東村役場行きに乗車し「秋葉前」下車、徒歩約5分。前橋駅からは関越交通バスで「かみつけの里博物館」下車。市内循環バス「ぐるりん」も利用でき、公共交通機関でのアクセスも便利です。
かみつけの里博物館は、単なる考古資料の展示施設ではなく、群馬のルーツを体感できる歴史の拠点です。榛名山麓に栄えた王と人々の営みを知ることで、現代へと続く地域の歩みを実感できるでしょう。ぜひ、1500年前の世界へ思いを馳せながら、古代のロマンと出会うひとときをお楽しみください。