長谷寺は、群馬県高崎市白岩町に位置する金峰山修験本宗の寺院で、山号を白岩山(しらいわさん)と称します。本尊は十一面観世音菩薩であり、関東屈指の観音霊場である坂東三十三観音第十五番札所として広く知られています。地名にちなみ「白岩観音」の名でも親しまれ、古くから多くの参拝者の信仰を集めてまいりました。
寺伝『白岩山長谷寺縁起』によれば、和銅4年(711年)、越後国の浦に三体の観音像が出現し、その後それぞれに縁のある地へ安置されたと伝えられています。そのうちの一体がこの白岩の地に祀られたことが、長谷寺の始まりとされています。
また、『久留馬村誌』には、孝徳天皇の御代(白雉5年・654年)に修験道の開祖として名高い役小角(役行者)がこの地を訪れ、白い大岩の上に仏像を安置して堂を建てたことが「白岩」という地名の由来になったとの伝説が記されています。
さらに、聖武天皇の勅願により徳道や行基が伽藍を建立したとも伝わり、源義家・源頼朝・新田義貞・上杉憲政・長野業政など、歴史に名を残す武将たちからも篤く信仰されたといわれています。
戦国時代の永禄6年(1563年)には武田信玄の箕輪城攻めにより焼失しましたが、天正8年(1580年)に世無道によって観音堂が再建されました。江戸時代には徳川家光より朱印地を与えられ、寺勢はさらに安定しました。近代に入り一時は天台宗に属しましたが、戦後に現在の金峰山修験本宗へと復しています。
長谷寺には数多くの文化財が伝えられています。なかでも本尊の木造十一面観音立像は群馬県指定重要文化財で、総高229.6センチメートルを誇る堂々たる仏像です。平安時代後期、11世紀末から12世紀初めの作とみられ、カヤ材の一木造で制作されています。秘仏とされ、通常は公開されていません。
また、鎌倉時代後期に制作されたと推定される前立の十一面観音立像も県指定重要文化財です。そのほか、不動明王立像や毘沙門天立像、仁王門および仁王像などが高崎市指定重要文化財に指定されており、歴史的・芸術的価値の高い寺院として評価されています。
坂東三十三観音巡礼の第十五番札所として、多くの巡礼者が訪れます。本尊真言は「おん まか きゃろにきゃ そわか」、ご詠歌は「誰も皆な祈る心は白岩の 初瀬の誓ひ頼もしきかな」と伝えられ、観音菩薩の慈悲にすがる人々の祈りが今も絶えることはありません。
前後の札所は、第十四番・弘明寺、第十六番・水澤寺であり、群馬県内の巡礼路の中でも重要な位置を占めています。
白岩の名のとおり、周囲には岩肌が印象的な地形が広がり、四季折々の自然が境内を彩ります。春の新緑、夏の深い緑陰、秋の紅葉、冬の澄んだ空気の中での参拝は、それぞれに趣があり、訪れる人の心を静かに整えてくれます。
高崎駅から群馬バス榛名湖行または室田行に乗車し「ドドメキ」下車、徒歩約35分です。また、高崎駅から里見経由権田行に乗車し「下里見」下車後、高崎市コミュニティバス宮沢白岩線で「白岩観音北三叉路」下車、徒歩約5分でもアクセスできます。信越本線群馬八幡駅からも同様にバスとコミュニティバスを利用して訪れることが可能です。
歴史と信仰、そして自然が調和する長谷寺は、高崎市を代表する霊場の一つです。観音菩薩の慈悲に触れながら、静かなひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。