桜山は、群馬県藤岡市に位置する標高591メートルの山であり、その山頂付近は桜山公園として整備されています。桜の名所として広く知られており、日本さくら名所100選にも選ばれている、国の名勝および天然記念物に指定された特別な場所です。山の麓にはみかん園、中腹にはりんご園が広がり、それぞれの季節にはフルーツ狩りが楽しめる観光地としても人気があります。
桜山の山頂付近には、群馬県立桜山森林公園と藤岡市桜山公園が隣接しており、これらを合わせた広大なエリアが「桜山公園」として整備されています。群馬県立桜山森林公園は、1990年(平成2年)4月1日に開設され、15ヘクタールの敷地内には管理棟、四阿(あずまや)、日本庭園、見本庭園、芝生広場などが設置されています。一方、藤岡市桜山公園は、藤岡市の条例に基づいて設置および管理が行われている32ヘクタールの公園です。
桜山公園は、1908年(明治41年)に、山林を公園として整備し始めたことから歴史が始まります。当時、約1,000本の桜の苗木が植樹され、現在では春のソメイヨシノに加えて、11月末から12月初旬にかけて咲く冬桜が特に有名です。冬桜の季節には、桜と紅葉が同時に楽しめるという珍しい光景が広がり、多くの観光客を魅了しています。
2023年(令和5年)現在、藤岡市桜山公園と群馬県立森林公園を合わせた47ヘクタールのエリアには、約7,000本の冬桜が植えられています。しかし、天然記念物に指定された区域では樹勢の衰退が見られ、2012年度に407本あった冬桜が、2023年度には162本にまで減少しており、学術調査が行われています。
桜山はかつて「虚空蔵山」と呼ばれていました。1908年(明治41年)には、日露戦争の戦勝記念として、当時の三波川村村長であった飯塚志賀氏と村民が協力し、桜とカエデを山頂に植樹しました。1916年(大正5年)頃から、植樹された桜の一部が冬に開花するようになり、1937年(昭和12年)には国の名勝及び天然記念物に指定されました。
1947年(昭和22年)には、上毛かるたの「さ」の札に「三波石と共に名高い冬桜」として収録され、地域のシンボルとなりました。しかし、1973年(昭和48年)の山火事によって冬桜の大半が消失してしまいます。これを受け、志賀氏の子である飯塚馨氏を中心とした「三波川桜山保存会」が、新井民志氏が保有していた冬桜の苗を使って復興事業を開始しました。その結果、1990年(平成2年)には県立桜山森林公園が整備され、現在の桜山公園の姿が完成しました。
桜山には、山頂から中腹にかけて多くの遊歩道が整備されており、それぞれの道から異なる景観を楽しむことができます。例えば、第一駐車場から第1の広場を経由し、桜山山頂へ至る「山頂の道」は、約35分で頂上に到達することができます。また、「展望台の道」では、第一駐車場からわずか6分で展望台に辿り着き、美しい風景を一望できます。
桜山を楽しむためのハイキングコースも充実しています。代表的なルートには、鬼石郵便局や鬼石総合支所を起点にする「鬼石・桜山ルート」や、八塩温泉を経由する「八塩・桜山ルート」があります。また、大沢沿いや久々沢沿いを歩く「大沢ルート」「久々沢ルート」も人気のコースです。いずれのコースも、それぞれの特徴を生かしながら、桜山の自然を存分に楽しむことができます。
桜山公園では、春にはソメイヨシノが美しく咲き誇り、多くの観光客が訪れます。
初夏の桜山公園では、新緑が鮮やかに広がり、清々しい雰囲気を楽しむことができます。
冬桜が咲く季節には、桜と紅葉が同時に楽しめる貴重な光景が広がります。
桜山からは、御嶽山と筑波山を遠望でき、その美しい眺めが広がります。