群馬県高崎市に位置する高崎白衣大観音は、高崎観音山丘陵にそびえ立つ大観音像であり、その正式名称は白衣観音です。高崎市のシンボルとして知られ、市民からは「観音様」や「白衣観音」と親しまれています。観音像は標高190メートルの地点に建ち、その最上階からは高崎市街地や群馬県の美しい山々、さらには遠く八ヶ岳までも一望することができます。
1936年(昭和11年)、実業家である井上保三郎氏によって建立されたこの観音像は、鉄筋コンクリート製で高さ41.8メートル、重さは5,985トンという巨大なものです。建立当時、世界最大の観音像としてその名を轟かせました。この観音像は、大日本帝国陸軍歩兵第15連隊の戦没者を慰霊するため、また観光地としての高崎の発展を目的として建立されました。
内部は9層に分かれており、146段の階段を登ることで、20体の仏像が安置された各層を巡ることができます。また、観音像の原型は、伊勢崎市出身の鋳金工芸作家・森村酉三氏(日展・無鑑査)によって制作され、その施工は黒川竜玉氏が指揮をとりました。特に興味深いのは、森村氏のアトリエから井上工業東京支店まで、当時井上工業に所属していた若き日の田中角栄氏が、自転車で運んだという逸話です。
高崎白衣大観音は1936年(昭和11年)に建立され、同年10月20日に開眼供養が行われました。その後、1937年(昭和12年)に高崎観光協会が設立され、観音像を中心とした観光地化が進みました。1938年(昭和13年)には観音像が高崎市に寄付され、1941年(昭和16年)には慈眼院が現在の場所に移築され、観音像が慈眼院の本尊の前仏となりました。
その後、1950年(昭和25年)には毎日新聞社の「観光地百選」に入選し、高崎の観光地としての地位が確立されました。さらに、1961年(昭和36年)には「高崎フェアリーランド」(後のカッパピア)が開園し、観光地としての魅力がさらに増しました。1995年(平成7年)には大改修が行われ、2000年(平成12年)には高崎白衣大観音像が国の登録有形文化財に指定されました。
高崎白衣大観音では、2011年(平成23年)から地元のNPO法人たかさきネットワークによって「赤い糸祈願祭」が毎年バレンタインデーからホワイトデーまでの期間に開催されています。この祈願祭は「カップルで参拝すると別れる」という都市伝説の払拭と、高崎市の活性化を目的としています。祈願祭では観音像の小指から約30メートルの赤い糸が垂らされ、その端を参拝者が自分の小指に結んで祈願を行います。2022年からはLEDを内蔵したロープが使用され、夜間には幻想的な光景を楽しむことができます。
また、高崎白衣大観音の周辺には、「カッパピア」の跡地を活用した観音山公園が整備されており、染料植物園や洞窟観音などの観光名所も点在しています。特に自然歩道が整備されているため、観光と合わせて自然散策も楽しむことができます。さらに、1962年に公開された映画『キングコング対ゴジラ』の撮影でも、高崎観音がロケ地として使用されました。
高崎白衣大観音へは、高崎駅西口から高崎市内循環バス「ぐるりん」観音山線に乗車し、「白衣観音前」停留所で下車します。所要時間は約25分です。観音像を訪れる際には、この便利な交通手段を利用するとよいでしょう。
高崎白衣大観音は、高崎市のシンボルであり、その壮大な姿と歴史的背景は多くの人々を引きつけます。観光地としての魅力も高く、周辺には多くの観光スポットが点在しており、一年を通して訪れる価値があります。特に「赤い糸祈願祭」の期間中は、恋愛成就を願うカップルにとって特別な場所となります。是非、高崎白衣大観音を訪れ、その壮大さと静寂の中に流れる歴史を感じてみてください。