大室古墳群は、群馬県前橋市東大室町・西大室町に広がる古墳群で、赤城山南麓の城南地区に位置しています。6世紀初頭から後半にかけて築造された前方後円墳を中心とする一大古墳群であり、前二子古墳・中二子古墳・後二子古墳・小二子古墳の4基は国の史跡に指定されています。
雄大な赤城山を背景に、古代毛野(けぬ)地域を治めた豪族の存在を今に伝える歴史遺産として高く評価されており、現在は周辺が大室公園として整備され、「日本の歴史公園100選」にも選ばれています。歴史と自然が調和する空間として、多くの観光客や歴史愛好家が訪れています。
大室古墳群は、前二子古墳・中二子古墳・後二子古墳・小二子古墳の大型前方後円墳を中心に構成されています。築造順は、前二子古墳(6世紀初頭)、中二子古墳(6世紀前半)、後二子古墳(6世紀後半)、小二子古墳(6世紀後半)と推定されており、時代の推移とともに地域の勢力が受け継がれていった様子がうかがえます。
これらの古墳は主軸を北東方向に向けて築かれ、盾形の二重周溝(堀)を巡らせるなど、当時の高度な土木技術と権威の象徴を示しています。特に中二子古墳は墳丘長111メートルを誇る群最大規模の古墳で、その堂々たる姿は圧巻です。
前二子古墳は墳丘長94メートルの前方後円墳で、両袖式横穴式石室を有します。1878年(明治11年)に石室が開口され、数多くの副葬品が発見されました。金製耳管やガラス玉、武器、馬具、須恵器・土師器など豊富な出土品は、当時の社会的地位の高さを物語っています。
英国外交官アーネスト・サトウが調査に訪れ、出土状況を詳細に記録し、赤色顔料の科学分析を行ったことは、日本考古学史上特筆すべき出来事です。科学的手法による分析の先駆例としても知られています。
現在は整備により石室の見学も可能で、狭く奥へと続く空間に足を踏み入れると、まるで古代へタイムスリップしたかのような感覚を味わうことができます。
中二子古墳は墳丘長111メートルを誇る最大の前方後円墳です。二重の周溝や中堤が巡り、葺石で覆われた墳丘は壮大な景観を形成しています。およそ3000本もの埴輪が立てられていたと推定され、盾持人や武具を模した形象埴輪が並んでいた様子が復元展示されています。
埴輪の胎土分析からは、藤岡地域の窯で生産された可能性が示されており、広域的な交流も推測されています。2020年にはテレビCMの撮影地にもなり、その美しい景観が注目を集めました。
後二子古墳は墳丘長85メートルの前方後円墳で、半地下式の両袖型横穴式石室を備えています。墳丘の一段目を大きく築き、その上に小さな段を載せる構造は「下野型古墳」と呼ばれる形式に属します。
石室前では煮炊きの痕跡が確認され、葬送儀礼が行われた様子が復元されています。猿の親子と犬の小像が付いた円筒埴輪は全国でも希少な例で、群馬県内でのみ確認されている貴重な資料です。
小二子古墳は墳丘長38メートルと比較的小規模ながら、後二子古墳と同時期に築造されたと考えられています。全面的な発掘調査を経て、築造当時の姿に近い形で復元され、墳丘上には埴輪が並ぶ様子が再現されています。
石室からは耳環や直刀、鉄鏃などが出土し、墓前祭祀の痕跡も確認されています。古代の葬送文化を具体的に体感できる貴重な史跡です。
現在、大室古墳群一帯は大室公園として整備され、歴史と自然を体験できる総合公園となっています。園内には「風のわたる丘」「時の広場」「岩室ゾーン」「親水ゾーン」など多彩なエリアが設けられています。
民家園では赤城型養蚕農家「旧関根家住宅」(前橋市指定重要文化財)が公開され、古代住居も復元展示されています。また「大室はにわ館」では、3D映像による古墳紹介や出土品の複製展示を通じて理解を深めることができます。
春の新緑、秋の紅葉、そして一面を彩るコスモス畑など、四季折々の自然も楽しめ、家族連れや観光客でにぎわいます。
北関東自動車道波志江スマートインターチェンジから約3.6km(車で約10分)、伊勢崎インターチェンジから約5km(車で約10分)です。
上毛電気鉄道大胡駅からタクシーで約10分、JR両毛線伊勢崎駅からタクシーで約20分です。
大室古墳群は、6世紀の毛野地域の豪族たちの威勢を今に伝える貴重な文化遺産です。広大な古墳公園を歩きながら、石室に入り、埴輪を眺める体験は、古代世界への旅そのものといえるでしょう。赤城山の雄大な景観とともに、歴史のロマンを感じられる前橋市屈指の観光スポットです。