焼きまんじゅうは、群馬県を代表する郷土食であり、江戸時代末期から受け継がれてきた伝統の味です。小麦粉を主原料としたまんじゅうを竹串に刺し、甘みのある味噌だれをたっぷりと塗って炭火などで香ばしく焼き上げます。ふっくらとした生地と、表面にこんがりとついた焦げ目、そして味噌だれの甘じょっぱい風味が特徴で、群馬県民の“ソウルフード”として広く親しまれています。
まんじゅうといっても、一般的な餡入り和菓子とは異なり、基本は餡の入っていない「素まんじゅう」です。中国の饅頭(マントウ)に近い素朴な味わいで、そこに濃厚な味噌だれが重なることで独自の美味しさが生まれます。近年では小豆餡や黒ごま餡入りなど、さまざまな種類も登場し、世代を問わず楽しまれています。
群馬県は古くから米と麦の二毛作が盛んな地域であり、小麦粉を使った料理が数多く発展してきました。炭酸まんじゅうやそばまんじゅうなど、多彩なまんじゅう文化が根付いています。その中でも、串に刺して焼き上げるという独特の調理法を持つ焼きまんじゅうは、ひときわ存在感を放つ郷土料理です。
生地には麹菌やどぶろくを用いて発酵させる「酒まんじゅう」の製法が用いられます。小麦粉に麹を混ぜて発酵させ、蒸し上げることで、ほのかな甘みとやわらかな食感が生まれます。これを竹串に刺し、黒砂糖や水飴を加えた甘い味噌だれを塗り、炭火で丁寧に焼き上げるのです。焼きたてはふんわりとやわらかく、味噌の香ばしさが際立ちます。
焼きまんじゅうの起源は19世紀中期、江戸時代末期にさかのぼります。発祥地については前橋市、伊勢崎市、沼田市など諸説ありますが、前橋の老舗「原嶋屋総本家」の初代・原嶋類蔵(あるいは類蔵と伝わる人物)が考案し、市で売り出したのが始まりと伝えられています。
当時は養蚕業や絹織物業が盛んで、生糸や繭の取引で多くの商人が集まっていました。そうした商工業者の交流を通じて焼きまんじゅうは県内各地へ広まり、やがて群馬全土で愛される存在となりました。また、明治時代に黒蜜が輸入されるようになったことで味噌だれの甘みが増し、現在に近い味わいへと発展したといわれています。
焼きまんじゅうは日常的に専門店で販売されているほか、お花見や夏祭り、前橋初市などの行事では欠かせない存在です。屋台から立ちのぼる甘味噌の香ばしい香りは、祭りの風景そのものともいえるでしょう。人気店では行列ができることも珍しくありません。
伊勢崎市では、直径約50センチメートルの巨大まんじゅうを焼き上げる「上州焼き饅祭(まんさい)」が開催され、冬の風物詩となっています。こうしたイベントを通して、焼きまんじゅうは世代を超えて受け継がれています。
焼きまんじゅうは、焼きたてをそのまま味わうのが最もおすすめです。時間が経つと水分が抜けてやや固くなるため、ほんのり温かい状態が最も美味しいとされています。食べる際は串から一つずつ外し、箸でいただくのが一般的です。
お土産用には、焼く前のまんじゅうと味噌だれをセットにした商品も販売されています。自宅で炭火やオーブントースターを使って焼けば、現地さながらの味を楽しむことができます。また近年では、焼きまんじゅう風味のスナック菓子やジェラート、せんべいなども登場し、伝統の味が新たな形で広がっています。
焼きまんじゅうは、2022年に文化庁の認定事業「100年フード」伝統の部門に選ばれました。これは、長年にわたり地域で継承されてきた食文化として高く評価された証です。江戸時代から続く味が、現代においても変わらず人々に愛されていることを示しています。
焼きまんじゅうは、群馬の風土と歴史が生んだ郷土食です。小麦文化、養蚕業の繁栄、祭りのにぎわいなど、地域の歩みとともに発展してきました。中部地域、とりわけ伊勢崎市周辺には多くの専門店があり、店ごとに味噌だれの甘さや焼き加減に個性があります。
群馬県を訪れた際には、ぜひ本場で焼きたての一串を味わってみてください。甘く香ばしい味噌の香りとともに、群馬の歴史と人々の暮らしに思いを馳せるひとときを楽しむことができるでしょう。