上野ダムは、群馬県多野郡上野村に位置する、一級河川・利根川水系神流川の最上流部に建設された発電専用ダムです。豊かな自然に囲まれた山深い地にそびえる高さ120メートルの巨大な堤体は、訪れる人に強い印象を与えます。ダムによって形成された人造湖は奥神流湖と名付けられ、四季折々の山並みを映す美しい景観が広がっています。
上野ダムは、長野県南相木村にある南相木ダムとともに、世界最大級の揚水式発電所である神流川発電所を支える重要な施設です。観光地としての魅力と、日本のエネルギーを支える最先端技術の拠点という二つの顔を持つ、注目すべきスポットです。
上野ダムは、東京電力リニューアブルパワー株式会社が管理する発電専用ダムで、堤高120.0メートルの重力式コンクリートダムです。利根川水系のダムの中でも6番目に高く、発電専用ダムとしては最大級の規模を誇ります。
有効貯水容量は約1,267万トンで、上部調整池である南相木ダムと同規模です。両ダムの標高差653メートルという大きな落差を活用し、揚水式発電によって最大282万キロワット(現在は一部稼働)の電力を生み出す計画となっています。
ダム湖である奥神流湖は、神流川の清流と周囲の深い山々に囲まれた静かな湖です。ダムサイトから望む湖面と連なる山並みの風景は非常に美しく、晴天時には澄んだ空と水面が調和した絶景が広がります。人工的に造られた湖でありながら、自然と見事に調和している点も大きな魅力です。
上野ダムと南相木ダムを結ぶのが、地下約500メートルに建設された神流川発電所です。揚水式発電とは、電力需要の少ない夜間に水を上部ダムへ汲み上げ、需要が増える昼間に水を落として発電する仕組みです。効率的に電力を供給できるため、日本の電力安定供給に大きく貢献しています。
現在は2号機までが稼働していますが、将来的に6号機まで完成すれば、世界最大級の揚水式発電所となる予定です。発電所では無料見学ツアーも実施されており、巨大な地下空間や発電設備を間近で見学することができます。個人見学から団体研修まで幅広く対応している点も魅力です。
神流川は、利根川水系において重要な支流の一つです。東京電力は、既存の揚水発電所に続く新たな大規模電源開発地点として、神流川最上流部に着目しました。そして利根川水系と信濃川水系という二つの水系をまたぐ壮大な揚水発電計画が立案されました。
その結果、信濃川水系側に南相木ダム、利根川水系側に上野ダムが建設されることとなりました。1995年に神流川発電所の建設が始まり、2003年にダム本体が竣工、2005年に両ダムが完成しました。
上野ダムの建設では、工事の効率化を図るために「合理化工法」が採用されました。主ダムには大規模ダムで用いられるRCD工法、副ダムには拡張レヤ工法が採用され、一つのダムに二つの工法を併用するという珍しい事例となっています。これは技術的にも注目すべき特徴です。
上野ダムは山深い自然環境の中に建設されたため、環境保全が重要課題となりました。建設にあたっては、シャクナゲやフタバアオイなどの貴重な植物の移植や植生の回復が行われました。また、濁水処理基準を厳格に設定し、水質保全にも力が注がれました。
こうした取り組みが評価され、2002年には環境マネジメントの国際規格であるISO14001を取得しています。
ダム完成後も、河川維持流量を確保するための放流設備が設けられています。これにより、神流川の水量を安定させ、漁業や生態系への影響を抑える配慮がなされています。
上野ダムは見学が可能で、両岸に広場が整備されています。ダム直下へも徒歩でアクセスでき、巨大な堤体を間近に体感できます。整備された道を歩きながら、神流川の清流や豊かな緑を楽しむことができます。
周辺には浜平温泉「しおじの湯」や全国郷土玩具館、本谷特設釣り場などの観光施設があり、ダム見学とあわせて楽しむことができます。渓流釣りや温泉でのんびりと過ごす時間は、山村ならではの贅沢な体験です。
上野ダムのダムカードは、上野村産業情報センターやしおじの湯で配布されています。ダムを訪れた証明写真を提示することで受け取ることができ、ダムファンには人気のアイテムとなっています。
高崎線新町駅または八高線群馬藤岡駅から路線バスで「しおじの湯」まで約3時間。その後、徒歩で約3キロメートルです。
上信越自動車道・下仁田インターチェンジから国道254号を経由し、群馬県道45号を利用するルートが比較的便利です。長野県側からはぶどう峠や十石峠を越えるルートがありますが、山道のため運転には十分注意が必要です。
上野ダムは、単なる発電施設にとどまらず、自然景観と高度な土木技術が融合した壮大なプロジェクトの結晶です。奥神流湖の静かな湖面、地下深くに広がる巨大発電施設、そして周囲の手つかずの自然。これらが一体となり、訪れる人に特別な体験を提供してくれます。
群馬県上野村を訪れた際には、ぜひ上野ダムと奥神流湖を巡り、日本のエネルギーを支える現場と豊かな自然の両方を体感してみてはいかがでしょうか。