群馬県安中市にあるテーマパーク
碓氷峠鉄道文化むらは、群馬県安中市松井田町横川に位置する、体験型の鉄道テーマパークです。訪れる人々に、鉄道の歴史や技術、そしてその魅力を伝える場所として親しまれています。
碓氷峠鉄道文化むらは、1997年10月1日に廃止された東日本旅客鉄道(JR東日本)の信越本線横川 - 軽井沢間の歴史を後世に伝えるために、地元住民の声を受けて計画されました。1996年(平成8年)には「横川・軽井沢間周辺整備等推進計画」が策定され、翌年には「横川・軽井沢間周辺整備基本構想」が作られました。
この基本構想に基づき、横川駅周辺の整備の一環として、横川運転区跡地に建設されたのが碓氷峠鉄道文化むらです。1999年4月18日に開園し、施設は安中市が保有、一般財団法人碓氷峠交流記念財団が運営しています。また、愛称は「PoppoTown(ポッポタウン)」として商標登録されています。
館内には、碓氷峠の歴史を伝える資料や、碓氷峠で活躍した鉄道車両、さらには国鉄時代の貴重な車両などが展示されています。訪れる人は、これらの展示物を通じて、鉄道の過去と現在に触れることができます。また、信越本線の廃線跡を利用したEF63形電気機関車の体験運転や、トロッコ列車の運行も行われており、鉄道ファンや家族連れに人気です。
1998年8月2日に着工され、仮称「横川鉄道文化むら」として計画が進行しました。1999年2月21日には、屋外展示場に車両が搬入され、4月18日に正式に開園しました。
2005年3月22日には、旧信越本線の下り線を利用したトロッコ列車「シェルパくん」が運行を開始しました。2011年5月5日にシェルパくんの牽引機が故障し、運行が一時停止されましたが、7月25日にはリース機を使って一部区間の運行が再開されました。2013年3月27日には新造機関車が導入され、全区間の運行が再開されました。
2019年に開業20周年を迎え、荻野屋とのコラボ企画として「峠の釜めし」を季節ごとにオリジナルデザインで販売しました。また、2020年2月22日には園内の売店をリニューアルし、営業を再開しました。2021年には初の「横川ナイトパーク」や屋外展示場でのキャンプイベントが開催され、2022年10月1日には開園以来初の料金改定が行われました。
碓氷峠鉄道文化むらは、約20億円の総事業費を投じて開園しました。初年度には約29万5000人が訪れ、2億3319万円の収入を上げました。しかし、年を追うごとに来園者数は減少し、2016年度には13万2800人、収入は1億3500万円にまで落ち込みました。また、動態保存中の機関車の経年劣化による点検・修理費用の増加が課題となっています。そのため、財団では「サポーターズ制度」を導入し、寄付金やボランティアを募っています。
碓氷峠鉄道文化むらには、多くの電気機関車が保存されています。その中には、碓氷峠やJR東日本に関連しない車両も含まれています。これらは、かつて高崎運転所(現・ぐんま車両センター)に集められていた車両で、「高崎電気機関車館」(仮称)の収蔵用として保存されていましたが、計画が消滅したため、当施設で保存されています。
屋外展示場の車両は、開園当初は車内に入ることができましたが、部品の盗難が相次ぎ、現在ではほとんどの車両で車内への立ち入りが制限されています。また、2023年夏までにマイネ40 11とオハネ12 29を宿泊施設として整備する計画が発表されましたが、その後の進展はなく、中止や延期の発表もされていません。
碓氷峠鉄道文化むらには、旧横川運転区の詰所を活用した「鉄道資料館」があります。館内では鉄道ジオラマや歴史資料が多数展示されており、訪れる人々に鉄道の魅力を伝えています。また、鉄道シミュレーターや鉄道グッズの販売も行われており、鉄道ファン必見の施設です。
碓氷峠鉄道文化むらでは、遊戯施設も充実しています。その代表的なものが「シェルパくん」と「アプトくん」です。
「アプトくん」は、園内に敷設された軌間610mm、延長約800mの周回軌道を運行する本格的な遊覧列車です。開園当初から運行されており、園内の北側では信越本線の旧下り線部分を走行します。使用されている3950号機関車は、イギリス製のタンク式蒸気機関車で、2021年にはクラウドファンディングにより修繕費用が集められました。
「シェルパくん」は、旧信越本線の下り線を活用して運行されるトロッコ列車で、2005年3月22日に運行が開始されました。碓氷峠鉄道文化むら内の「ぶんかむら駅」から、「とうげのゆ駅」までの約2.6kmを運行しており、所要時間はおよそ20分です。通常は週末と多客期に1日5往復が運行されています。
シェルパくんでは、松山重車輌工業製の32tディーゼル機関車「MR1106」が牽引機として使用されています。この機関車は2013年3月27日からシェルパくんの牽引に使用されており、その特徴的な塗装は一般公募で決められました。客車は2両が北陸重機工業で製造され、定員はそれぞれ54名(現在は50名)となっています。
碓氷峠鉄道文化むらは、鉄道の歴史や技術を学ぶだけでなく、実際に体験できる貴重なテーマパークです。多くの保存車両や資料、遊戯施設を通じて、訪れる人々に鉄道の魅力を伝え続けています。地域の歴史とともに未来へとその価値を紡いでいく場所として、今後も多くの人々に愛される存在であり続けることでしょう。