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磯部温泉

(いそべ おんせん)

温泉記号発祥の地として知られる歴史ある名湯

磯部温泉は、群馬県安中市に位置する歴史ある温泉地です。かつては上野国に属し、中山道の宿場町にも近い立地から、古くより多くの旅人や湯治客に親しまれてきました。とりわけ注目すべきは、現在全国で広く使われている温泉記号(♨)の発祥の地であるという点です。日本の温泉文化を象徴するこの記号が、磯部の地から始まったと伝えられていることは、大変意義深いものといえるでしょう。

碓氷川の清流と妙義山を望む温泉地

磯部温泉は、日本三奇勝の一つに数えられる妙義山を望む、碓氷川の清流沿いに広がっています。四季折々に表情を変える山々と川の風景は美しく、訪れる人々に心安らぐひとときを与えてくれます。江戸時代には中山道を行き交う旅人で賑わい、近隣からの湯治客も多く訪れました。

また、都会の喧騒を離れて静養を求める文人墨客も数多く滞在し、その足跡は文学碑として今も温泉街に残されています。自然と歴史、文化が調和する落ち着いた雰囲気は、磯部温泉ならではの魅力です。

泉質と効能

磯部温泉の泉質は、含銅・鉄(II)―ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩強塩温泉で、pH値は7.3〜7.5の中性です。高張性中性高温泉に分類され、体を芯から温める保温効果が高いことで知られています。塩分を多く含むため湯冷めしにくく、古くから湯治場として利用されてきました。

かつての源泉温度は24℃ほどで、加温して使用されていましたが、その後新たに掘削された源泉は約52℃と高温で、現在は安定した湯量が確保されています。

温泉街と見どころ

駅前に広がる温泉街

JR信越本線磯部駅の駅前には温泉街が広がり、7軒の温泉旅館や日帰り入浴施設、足湯などが点在しています。碓氷川に架かる愛妻橋鉱泉橋からは妙義山を望むことができ、散策にも最適です。

日帰り温泉「恵みの湯」

愛妻橋の磯部駅側には、市営の日帰り入浴施設「恵みの湯」があります。温泉に加え、砂塩風呂も名物となっており、観光客だけでなく地元の方々にも親しまれています。鉱泉橋近くの足湯は気軽に利用でき、旅の途中のひと休みにおすすめです。

温泉記号発祥の歴史

1661年(万治4年)、江戸幕府が農民の土地境界争いに関する評決文を出した際、その添付絵図に湯気の立つ記号が描かれていました。この記号が現在の温泉記号の原型とされ、磯部温泉は温泉記号発祥の地とされています。

また、1783年(天明3年)の浅間山大噴火により湯量が増加したとも伝えられており、自然の力とともに歩んできた温泉地であることがうかがえます。

文学と磯部温泉

明治時代の児童文学者巖谷小波は、磯部を訪れた際に「舌切り雀」の物語を書き上げました。これにより、磯部温泉は舌切雀伝説発祥の地ともいわれています。「舌切雀のお宿ホテル磯部ガーデン」には、小波が詠んだ句「竹の春 雀千代ふる お宿かな」の句碑が残されています。

さらに、外務大臣を務めた井上馨も磯部温泉を静養地として愛し、1886年には当地に別邸を建設しました。このように、多くの文化人や政治家に親しまれてきた歴史が、磯部温泉の格調を物語っています。

名物と味覚の楽しみ

磯部せんべい

磯部温泉の代表的なお土産が、鉱泉水を使って焼き上げた磯部せんべいです。薄くサクサクとした軽い食感が特徴で、世代を問わず親しまれています。

ふわとろ豆腐

温泉水で煮込むふわとろ豆腐も名物料理の一つです。鉱泉水でじっくり温められた木綿豆腐は、溶けるように柔らかくなり、口当たりはまさに「ふんわりとろり」。旅館や店舗によっては「鉱泉豆腐」として提供されることもあります。

夏の風物詩・磯部簗

6月中旬から9月下旬にかけては、碓氷川のほとりに設けられる磯部簗で、新鮮な鮎料理を味わうことができます。清流で育った鮎の塩焼きや天ぷらは、夏ならではの贅沢な味覚です。

アクセス

鉄道をご利用の場合は、JR信越本線磯部駅が最寄り駅となります。駅から徒歩圏内に温泉街が広がり、アクセスも便利です。お車の場合は、上信越自動車道松井田妙義ICから一般道を利用してお越しいただけます。

まとめ

磯部温泉は、温泉記号発祥の地としての歴史的価値に加え、妙義山と碓氷川の自然美、文人墨客ゆかりの文化、そして名物料理まで、多彩な魅力を備えた温泉地です。静かな環境の中でゆったりと湯に浸かり、歴史と自然を感じるひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。心と体を癒やす、群馬を代表する名湯のひとつです。

Information

名称
磯部温泉
(いそべ おんせん)

富岡・下仁田

群馬県