鬼押ハイウェー(おにおし)は、長野県北佐久郡軽井沢町から群馬県吾妻郡嬬恋村鎌原に至る全長約16kmの一般自動車道(自動車専用道路)です。浅間山の北東麓を走り、軽井沢と嬬恋を結ぶ観光有料道路として、多くのドライバーに親しまれています。
本路線は「浅間・白根・志賀さわやか街道」の一部であり、さらに万座ハイウェーとあわせて「浅間白根火山ルート」を構成しています。上信越高原国立公園の雄大な自然を縦断するルートとして知られ、四季折々の絶景を楽しみながら走行できる名ドライブコースです。
鬼押ハイウェーの大きな魅力は、浅間山の雄大な姿を間近に感じられることにあります。軽井沢側の起点となる峰の茶屋は標高約1,655mに位置し、ここが本路線で最も高い地点です。そこから嬬恋方面へ向かうと、緩やかな下りを主体とした快適なドライブが続きます。
晴天の日には、浅間山や小浅間山を正面に望み、さらに遠くには白根山、万座山、四阿山などの山並みが広がります。とりわけ峰の茶屋から鬼押出し園にかけての区間では、浅間山を横目に走る爽快感が格別で、「絶景道路」と称されることもあります。
道路名の由来ともなっている鬼押出し園は、1783年(天明3年)の浅間山大噴火によって形成された広大な溶岩地帯です。幅約3km、長さ約12kmに及ぶ溶岩流が生み出した荒々しい景観は、まさに自然が創り出した芸術といえるでしょう。
鬼押出し園周辺では高木が少なく、視界が大きく開けています。360度のパノラマが広がり、浅間山と黒々とした溶岩原のコントラストが印象的です。火山の力強さと自然の再生力を体感できる、貴重な観光スポットです。
軽井沢側から進むと、六里ヶ原休憩所周辺で視界が一気に開け、裾野を広げた浅間山の雄姿を望むことができます。春の新緑、夏の高原の涼風、秋の紅葉、冬の白銀の世界と、季節ごとに異なる表情を見せる浅間山は、何度訪れても新たな感動を与えてくれます。
特に夏場は高原特有の爽やかな空気に包まれ、直線道路を走り抜ける爽快感が魅力です。ロングストレートが続く区間は、自動車のプロモーション映像のロケ地としても知られています。
鬼押ハイウェーは1933年(昭和8年)8月1日に供用開始された、日本の有料道路・自動車専用道路の先駆け的存在です。神奈川県の大船-江の島自動車専用道路、兵庫県の宝塚-尼崎自動車専用道路に続く、初期の本格的な自動車専用道路のひとつとされています。
当時の建築家・生田勉の日記には、「モダーン関所」と表現されるほど先進的な存在として記録されており、日本のモータリゼーション黎明期を象徴する道路でもあります。
鬼押ハイウェーは西武グループにより開発され、現在は西武不動産が管理運営する有料道路です。区間は峰の茶屋料金所から鬼押出し園を経て、嬬恋村鎌原までの約16kmとなっています。
料金は軽井沢区間(峰の茶屋~鬼押出し)が普通車270円、鎌原区間(鬼押出し~鎌原)が370円です。24時間営業で冬季閉鎖はありませんが、天候や浅間山の火山活動状況により通行規制が行われる場合があります。
本道路は自動車専用道路であり、歩行者、自転車、50cc以下の原動機付自転車および125cc以下の自動二輪車は通行できません。安全確保のため、規制標識が設置されています。
鬼押ハイウェーが通る上信越高原国立公園は、谷川岳、苗場山、草津白根山、四阿山、浅間山などを含む広大な山岳公園です。火山と高原が織りなすダイナミックな景観は、日本有数の自然美を誇ります。
この道路は、単なる移動手段ではなく、人・自然・感動をつなぐトラベルルートです。軽井沢の洗練された高原リゾートから、嬬恋の雄大な自然へと景色が移り変わる様子は、まさに旅の醍醐味そのものといえるでしょう。
春は雪解けとともに芽吹く新緑がまぶしく、夏は涼やかな高原の風が心地よく吹き抜けます。秋にはカラマツや広葉樹が鮮やかに色づき、冬は真白な雪景色が広がります。四季を通じて異なる景色を楽しめることが、鬼押ハイウェー最大の魅力です。
万座ハイウェーへと続く浅間白根火山ルートをあわせて走れば、浅間山から白根山、さらに万座温泉へと続く壮大な山岳観光を満喫できます。自然の美しさと厳しさ、そして火山の息吹を感じながら走るこの道は、訪れる人に忘れがたい旅の記憶を刻んでくれることでしょう。