四万川ダムは、群馬県吾妻郡中之条町に位置する利根川水系四万川に建設された重力式コンクリートダムです。堤高89.5メートルは、群馬県が運営するダムの中で最も高く、ダムの設計には西洋の城を想起させる独特のデザインが施されています。このダムは国土交通省によって「地域に開かれたダム」に指定されており、見学者向けに整備された監査廊の見学も可能です。見学には予約が必要ですが、ダム内部を見学できる貴重な機会を提供しています。
四万川ダムの建設は、群馬県が進めた「四万川総合開発事業」の一環として行われました。四万川にはすでに中之条ダム(高さ42メートル)が建設されており、主に砂防と発電を目的としていました。しかし、四万川と吾妻川流域の治水・利水をさらに強化するために、1980年(昭和55年)から最上流部に新たなダムの建設が開始されました。
四万川ダムは、洪水調節、不特定利水、四万温泉郷や太田市を含む地域への上水道供給、そしてダム直下の日向見発電所での最大1,000キロワットの水力発電を目的とした多目的ダムです。この補助多目的ダムの建設には19年の歳月が費やされ、1999年(平成11年)に完成しました。ダムは周辺の治水と利水を大幅に改善し、地域の発展に寄与しています。
四万川ダムによって形成された人造湖・奥四万湖は、四万温泉街の直上流に位置しており、周辺は公園として整備されています。訪れる人々はダムを真下から見上げることができ、その壮観な佇まいを楽しむことができますが、奥四万湖そのものもまた大きな魅力の一つです。
奥四万湖の湖水は、透き通ったコバルトブルーを呈しており、山の緑と湖の青のコントラストは息をのむ美しさです。人工的に作られた湖でありながら、その風景はまるで天然湖のような自然の美しさを感じさせます。奥四万湖の下流にある中之条ダムによって形成された四万湖もまた、同じくコバルトブルーの湖水を持っています。
奥四万湖の湖水は酸性が強いため、魚が生息することはできません。しかし、この酸性水に溶けている銅イオンや鉄イオンの濃度は極めて低いです。このため、湖水がコバルトブルーを呈する原因は、金属イオンによる長波長光の吸収ではなく、湖水中に含まれるアロフェン(アルミニウムケイ酸塩粒子)によるレイリー散乱によるものと考えられています。これは、裏磐梯の五色沼(瑠璃沼、青沼)と同様のメカニズムであるとされています。
奥四万湖は人工湖でありながら、その独特の色彩と美しさから、多くの観光客を魅了しています。湖水の色は自然と調和し、訪れる人々に四季折々の美しい風景を提供します。湖畔での散策や、周辺の観光スポットとの組み合わせで、奥四万湖は四万温泉を訪れる際に外せないスポットとなっています。
四万川ダムは、地域の治水・利水を担うだけでなく、美しい奥四万湖を形成し、観光資源としても重要な役割を果たしています。その西洋の城を思わせるデザインや、見学可能な監査廊は、多くの観光客にとって魅力的な訪問先となっています。また、奥四万湖のコバルトブルーの湖水は、科学的にも興味深い特性を持ち、自然の美しさを強調しています。四万川ダムと奥四万湖は、群馬県の自然と歴史を感じさせる貴重な場所であり、一度は訪れる価値のあるスポットです。