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岩櫃城

(いわびつじょう)

戦国の鼓動が響く東吾妻町の名城

群馬県吾妻郡東吾妻町にそびえる岩櫃山。その中腹に築かれた岩櫃城は、戦国時代の激動を物語る山城として知られています。吾妻川北岸の天然の要害に築かれたこの城は、上杉謙信に従う斎藤氏と、武田信玄に従う真田氏が争奪を繰り広げた歴史の舞台であり、最終的には真田信之の支配下に入り、慶長19年(1614年)に廃城となりました。現在は国指定史跡として保存され、歴史ファンや登山者、観光客に広く親しまれています。

築城の由緒と吾妻氏の時代

岩櫃城の築城年代は明確ではありません。鎌倉時代にこの地を治めた吾妻太郎助亮によって築かれたとの伝承もありますが、確証はなく伝説の域を出ていません。その後、吾妻氏は南北朝時代の動乱に巻き込まれ、当主・行盛が戦死するなど、城をめぐる情勢は不安定なものとなりました。

行盛の子・千王丸は秋間斎藤氏の庇護を受け、やがて山内上杉氏の偏諱を受けて斎藤憲行と名乗ります。こうして岩櫃城は次第に斎藤氏の拠点となり、戦国期へと歴史を進めていきます。

斎藤氏の支配と戦国の動乱

戦国時代、斎藤憲次が主君を討って岩櫃城を奪取し、その子・憲広が城を拠点に吾妻郡一帯を支配しました。永禄3年(1560年)には長尾景虎(後の上杉謙信)が攻め落としたとも伝えられますが、やがて城は再び斎藤氏の手に戻ります。

しかし、郡内豪族との争いに真田氏や武田氏が介入し、情勢は一変します。永禄6年(1563年)、真田幸隆の攻勢と内応によって岩櫃城は落城。斎藤氏は越後へ逃れ、やがてその勢力は駆逐されました。

真田氏の拠点としての岩櫃城

岩櫃城は真田氏にとって、上野国北部の沼田城や名胡桃城、そして信濃国の上田城を結ぶ重要な戦略拠点でした。真田氏は城を大改造し、中心曲輪から放射状に堀を配する独特の構造を整備。周囲には出丸や砦、番城を配置し、堅固な防御体制を築きました。

天正10年(1582年)、織田・徳川連合軍の侵攻により武田勝頼が窮地に立たされた際、真田昌幸は岩櫃城への撤退を進言しました。もし勝頼が入城していれば歴史は変わっていたともいわれますが、実現することなく武田氏は滅亡します。

その後、昌幸は嫡男・真田信幸(後の信之)に岩櫃城を守らせましたが、慶長19年に幕府を憚り城を破却。以後は原町に陣屋を置き、地域統治の拠点を移しました。

城の構造と天然の要害

岩櫃城は、岩櫃山北東の尾根上に築かれています。西は岩櫃山、南は急斜面を下る吾妻川、北は岩山に囲まれ、自然地形そのものが防御壁となる「天険の山城」です。

本丸・二ノ丸・中城が尾根沿いに連なり、北東には出丸の天狗丸が配置されています。さらに支城として柳沢城(観音山城)も存在し、広範囲に防衛網を張り巡らせていました。この構造は後の上田城や大坂城の真田丸にも通じる、防御思想の原型ともいわれています。

発掘調査と新たな発見

1972年に町史跡、2017年に続日本100名城(第117番)に選定され、2019年には国史跡に指定されました。近年の発掘調査では、本丸東端部から金属加工用の坩堝の一部が発見され、科学分析の結果、金粒子が検出されました。

これにより、真田氏あるいは武田氏の時代に金の加工が行われていた可能性が示唆されています。岩櫃城は単なる軍事拠点にとどまらず、経済的な機能も担っていたと考えられています。

岩櫃山 ― 絶景と歴史が融合する名峰

標高802.6メートルの岩櫃山は「ぐんま百名山」の一つに数えられ、吾妻峡とともに吾妻八景を代表する景勝地です。南面には約200メートルの岩壁が切り立ち、荒々しい山容が訪れる人々を圧倒します。

約600万年前の火山活動によって形成された山体は、風雨や河川浸食によって現在の姿となりました。登山道には鎖や梯子が整備されており、適度なスリルを味わいながら山頂を目指せます。

山頂からは上州の山々を一望でき、晴天時には富士山を遠望することも可能です。毎年11月3日には紅葉祭が開催され、色づく山々とともに地元の郷土料理や山菜料理が振る舞われ、多くの観光客で賑わいます。

真田丸と岩櫃のロマン

2016年のNHK大河ドラマ『真田丸』では、オープニング映像のクライマックスに岩櫃山が登場し、大きな話題となりました。戦国の名将・真田昌幸、信繁(幸村)の原点ともいえるこの地は、歴史ロマンを感じるパワースポットとしても人気です。

麓の潜龍院跡は、武田勝頼を迎えるために昌幸が築いた御殿跡と伝わり、城とともに訪れたい歴史スポットです。

岩櫃をめぐる旅へ

岩櫃城と岩櫃山は、歴史・自然・絶景が一体となった東吾妻町屈指の観光名所です。山城の遺構を歩きながら戦国武将の息吹を感じ、山頂からの雄大な眺望に心を解き放つ時間は、日常を忘れさせてくれる特別な体験となるでしょう。

四季折々に表情を変える岩櫃。春の新緑、夏の深緑、秋の紅葉、冬の澄んだ空気。それぞれの季節に異なる魅力を放ちます。歴史と自然が織りなすこの地を、ぜひゆっくりと巡ってみてください。

Information

名称
岩櫃城
(いわびつじょう)

渋川・伊香保

群馬県