榛名山は、関東地方北部に位置する群馬県にある上毛三山の一つであり、古くから山岳信仰の対象とされてきた霊峰です。山の南西麓には榛名神社が鎮座し、訪れる人々を迎え入れています。
榛名山の標高は約1,390.3メートルで、山頂にはカルデラ湖である榛名湖が広がっています。その中央には、榛名富士溶岩ドームが聳え立ち、495年頃に大規模な噴火を起こしたとされています。
榛名山の周囲には、掃部ヶ岳(かもんがたけ、標高1,449メートル)を最高峰として、天目山(標高1,303メートル)、相馬山(標高1,411メートル)、二ッ岳(標高1,344メートル)、烏帽子岳(標高1,363メートル)、鬢櫛山(標高1,350メートル)など多くの山々が連なり、その外側には水沢山(標高1,194メートル)や鷹ノ巣山(標高956メートル)、三ッ峰山(標高1,315メートル)、杏が岳(標高1,292メートル)などの側火山が存在します。
榛名山は、約50万年前に始まった古期榛名火山と、約5万年前に活動を再開した新期榛名火山の二つの火山活動によって形成されました。特に、489年と525年から550年にかけては大規模な噴火が記録されており、これらの噴火により、マグマ噴出量はそれぞれ0.32 DREkm3および0.74 DREkm3に達しました。
有史以降の記録は残っていませんが、考古学的な調査から、6世紀に榛名山二ッ岳で度重なる噴火が発生したことが分かっています。例えば、群馬県の金井東裏遺跡では、Hr-FA火砕流によって巻き込まれたとみられる古墳時代の遺物が発見されており、当時の群馬県域に甚大な被害がもたらされたことが明らかになっています。
榛名山には、さまざまな伝承が伝わっています。例えば、巨人ダイダラボッチが富士山、浅間山、榛名山を競争で作ったという民話や、榛名神社が諏訪神社から井戸を通して食器を借りたという民話などがあります。また、弘法大師(空海)が杖を刺して井戸を掘ったという伝承も残されており、これらは榛名山が山岳信仰の対象であったことを物語っています。
榛名山の周辺には、温泉地として有名な伊香保温泉をはじめ、さまざまな観光スポットが点在しています。中腹の展望台からは渋川市を一望でき、その美しい景観は訪れる人々を魅了します。また、信仰の対象となっている榛名神社や水沢観音も訪れる価値があります。
伊香保温泉から榛名山へは、群馬県道33号渋川松井田線を通って行くことができます。この道は一本道で、県立榛名公園の沼ノ原地区一帯や黒髪山神社の鳥居周辺、榛名湖畔の沿道では、毎年5月下旬から6月下旬にかけてヤマツツジやレンゲツツジが満開になり、訪れる人々を楽しませます。
榛名山の名を冠したものとして、旧日本海軍の金剛型戦艦「榛名」や、海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦「DDH141 はるな」などがあります。また、群馬県内の小学校では、運動会の際に「赤城団」「榛名団」「妙義団」の3組に分かれて競い合うこともあります。
榛名山は、さまざまな作品にも登場しています。例えば、テレビドラマ『はぐれ刑事純情派』や、岩明均の漫画『雪の峠・剣の舞』、さらに『頭文字D』や『彼女のカレラ My Favorite Carrera』など、幅広いジャンルでその名が使われています。
また、榛名山をモチーフにした「秋名山」という地名が登場する『頭文字D』では、主人公の藤原拓海がこの山で腕を磨くシーンが描かれています。