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武尊神社(群馬県 片品村)

(ほたか じんじゃ)

武尊山信仰を今に伝える古社

武尊神社は、群馬県利根郡片品村花咲に鎮座する由緒ある神社です。祭神には日本武尊をはじめとする二十三柱の神々が祀られ、旧社格は村社に列していました。とりわけ国の重要無形民俗文化財に指定されている「片品の猿追い祭り」で広く知られ、地域の歴史と信仰を今に伝える貴重な存在となっております。

武尊山信仰と神社のはじまり

武尊神社の起源は、古代の山岳信仰にさかのぼると考えられています。平安時代の神名帳『上野国神名帳』には、利根郡の項に「従一位 實高明神」などの名が見え、これが当社を指すものと伝えられています。本来は霊峰武尊山を御神体とする自然崇拝であったものが、やがて日本武尊の東征伝説と結びつき、英雄神としての日本武尊を祀る神社へと発展していったと考えられております。

利根郡内には十数社の武尊神社が存在しますが、その本社を特定することは難しいとされています。しかし『当郷旧家英名』などの記録では、花咲の武尊神社を利根郡の総鎮守、そして武尊山信仰の中心地として位置づけています。地域の人々にとって、精神的な拠り所であり続けてきたことがうかがえます。

創建の伝承と歴史的背景

創建は建治2年(1276年)と伝えられ、あるいは建長8年(1256年)に沼田氏初代・沼田景泰によって創建されたともいわれています。戦国時代には武田信玄が鰐口を寄進したとの記録もあり、当社が広く崇敬を集めていたことがわかります。

元禄4年(1691年)には社殿が再建されたとされ、現在の本殿は一間社流造の形式で、17世紀後期から18世紀初頭の建築と推定されています。この本殿は片品村指定重要文化財となっており、歴史的価値の高い建造物として大切に保存されています。

片品の猿追い祭り ― 祈りと伝統の祭事

武尊神社を代表する行事が、毎年旧暦9月の申の日に行われる「片品の猿追い祭り」です。約300年の歴史をもつと伝えられ、2000年には国の重要無形民俗文化財に指定されました。

伝承によれば、かつて武尊山の岩屋に白毛の大猿が住み、里へ下りて農作物を荒らしていたといいます。そこで武尊の神に祈願したところ、猿が退けられ、豊作となったことからこの祭りが始まったとされています。

祭りでは、村内六集落から選ばれた「ヒツバン(櫃番)」と「サカバン(酒番)」が中心となり、神前に酒と赤飯を供えます。その後、東西に分かれた参加者が「エッチョウ」「モッチョウ」と声を掛け合いながら赤飯をしゃもじで投げ合います。これは豊穣への感謝と、猿に赤飯を与えることで田畑を守ってもらうという意味が込められています。

やがて白装束の猿役が本殿から現れ、ヒツバンとサカバンがこれを追います。猿役と追う者は社殿の周囲を三度巡りますが、決して猿を追い越してはならないという厳格な決まりがあります。追い越せば不作になると信じられているのです。こうした所作の一つひとつに、農耕社会の祈りが色濃く息づいています。

周辺に広がる武尊神社のネットワーク

片品村内や利根郡、沼田市、川場村、昭和村、みどり市などには、同じく日本武尊を祀る武尊神社が点在しています。これらは武尊山信仰の広がりを示すものであり、地域ごとに独自の祭礼や伝承を守り続けています。幡谷の「申祭り」や越本の「武尊祭り」など、類似する祭事も各地で受け継がれており、利根沼田地域の文化的特色を形づくっています。

観光で訪れる魅力

武尊神社は、自然豊かな片品村花咲地区に鎮座し、四季折々の美しい風景に包まれています。春の新緑、夏の深い緑、秋の紅葉、冬の雪景色と、訪れるたびに異なる趣を楽しむことができます。

歴史ある社殿や静かな境内は、心を落ち着かせるひとときを与えてくれます。また、猿追い祭りの時期には地域全体が活気に包まれ、伝統文化を間近に体感する貴重な機会となります。武尊山への登山や周辺観光とあわせて参拝することで、自然信仰と歴史文化が融合した片品村の魅力をより深く味わうことができるでしょう。

おわりに

武尊神社は、武尊山への畏敬の念から生まれ、日本武尊信仰へと発展した歴史を今に伝える神社です。国指定重要無形民俗文化財である猿追い祭りは、地域の人々の祈りと結束を象徴する大切な行事です。片品村を訪れる際には、ぜひ武尊神社に足を運び、悠久の歴史と伝統文化に触れてみてはいかがでしょうか。

Information

名称
武尊神社(群馬県 片品村)
(ほたか じんじゃ)

尾瀬・沼田

群馬県