群馬県 > 尾瀬・沼田 > 吹割の滝

吹割の滝

(ふきわれ たき)

東洋のナイアガラと称される名瀑

吹割の滝は、群馬県沼田市を流れる片品川に位置する名瀑で、日本有数の渓谷美を誇る自然景勝地として知られています。滝の高さは約7メートル、幅は約30メートルに及び、その豪快な水の流れと独特の地形から「東洋のナイアガラ」とも称されています。

滝は岩盤の裂け目へ向かって水が勢いよく流れ落ちるという珍しい形状をしており、巨大な岩を吹き割ったかのように見えることから「吹割の滝」という名が付けられました。

その美しい自然景観と学術的価値が評価され、1936年(昭和11年)12月16日には旧文部省により「吹割渓ならびに吹割瀑」として天然記念物および名勝に指定されました。さらに2000年(平成12年)に放送されたNHK大河ドラマ『葵 徳川三代』のオープニングにも登場し、多くの人々にその雄大な姿が知られるようになりました。

滝の周辺には約1キロメートルにわたって壮大な岩盤の渓谷が続き、この一帯は吹割渓谷(片品渓谷)と呼ばれています。奇岩や岩壁、川の浸食によって生まれた地形が織りなすダイナミックな景観は、訪れる人々に強い印象を与えます。

吹割の滝の迫力

巨大な岩盤を裂くように流れる滝

吹割の滝の最大の特徴は、通常の滝のように崖から水が落ちるのではなく、川の中央にある巨大な割れ目に向かって水が流れ落ちるという独特の形状です。岩盤の裂け目へ水が吸い込まれていくような景観は非常に迫力があり、まさに自然が生み出した巨大な造形美といえるでしょう。

水量の多い時期には水しぶきが激しく舞い上がり、滝周辺には天然のミストが広がります。夏の暑い日にはこの水しぶきが心地よく、訪れる人々に爽快感を与えてくれます。

季節ごとに変わる景観

吹割の滝の魅力は、四季折々に変化する景観にもあります。

春 -新緑の季節-

雪解け水が増える春は、滝の水量が最も多くなる時期です。新緑に包まれた渓谷の中で、豪快な水流が轟音とともに流れ落ちる様子は圧巻です。

新緑の木々と岩肌、白い水しぶきのコントラストが美しく、爽やかな景観が広がります。

夏 -天然ミスト-

夏は深い緑と清涼な水しぶきが心地よく、避暑地としても人気があります。滝から舞い上がる天然ミストを浴びながら散策できるのも、この季節ならではの魅力です。

秋 -紅葉の絶景-

秋になると渓谷一帯が鮮やかな紅葉に染まり、赤や黄色の木々と滝の白い流れが美しいコントラストを描きます。紅葉の名所としても知られ、多くの観光客が訪れます。

吹割渓谷の見どころ

鱒飛の滝

吹割の滝の下流には鱒飛の滝(ますとびのたき)と呼ばれる滝があります。高さ約8〜15メートル、幅約6メートルの滝で、渓谷の中でも印象的な景観の一つです。

その昔、利根川の支流である片品川には多くの鱒が遡上していました。しかし、この滝の段差は魚が越えるには高すぎたため、鱒が懸命に飛び跳ねていたことからその名が付けられました。かつては「鱒止の滝」とも呼ばれていたと伝えられています。

般若岩

渓谷の右岸には般若岩(はんにゃいわ)と呼ばれる岩壁があります。岩肌の形が人の顔、特に般若の表情のように見えることからこの名前が付けられました。鋭い岩壁と迫力ある形状は、まるで渓谷を守る番人のような存在感を放っています。

屏風岩

また、巨大な岩壁が屏風のように連なる屏風岩(びょうぶいわ)も見どころの一つです。これは火砕流が固まった岩石が長い年月をかけて侵食されて形成されたもので、吹割渓谷を代表する奇岩の一つです。

甌穴

川底には大小さまざまな甌穴が見られます。これは水流によって石が回転しながら岩を削り取ることで形成された穴で、自然の力が生み出した造形美を間近に観察することができます。

吹割渓谷遊歩道の散策

吹割の滝周辺には吹割渓谷遊歩道が整備されており、渓谷を一周する散策コースとして人気があります。遊歩道の全長は約1キロメートルほどで、ゆっくり歩くとおよそ1時間程度のコースです。

途中には三つの観瀑台があり、それぞれ異なる角度から滝を望むことができます。浮島橋や吹割橋からの眺望も見事で、新緑や紅葉の時期には特に美しい景色が広がります。

また森林浴を楽しみながら渓谷美を満喫できるため、多くの観光客やハイカーに親しまれています。

この遊歩道は景観や地域文化の紹介に貢献したことが評価され、平成6年度には手づくり郷土賞(ふるさとを紹介する道)を受賞しました。

吹割の滝の地形と成り立ち

火砕流が生み出した壮大な渓谷

吹割の滝周辺の地形は、およそ900万年前の火山活動によって形成されました。巨大な噴火によって発生した火砕流が堆積し、それが冷えて固まることで溶結凝灰岩と呼ばれる岩石層が形成されたのです。

その後、長い年月をかけて片品川の流れが岩盤を削り続け、V字状の渓谷をつくり出しました。特に岩質の柔らかい部分が選択的に侵食されたことで、巨大な裂け目のような地形が生まれ、そこに水が流れ落ちることで現在の吹割の滝が形成されました。

滝の名前は、まるで巨大な岩が水によって吹き割られたように見えることに由来しています。

千畳敷と甌穴が広がる川床

吹割渓谷の川床には、平らに広がる岩盤があり、その中でも特に広い場所は千畳敷と呼ばれています。ここでは水の流れによって岩が削られ、大小さまざまな穴が形成されています。

これらの穴は甌穴(おうけつ)と呼ばれる地形で、水流によって回転する石が岩盤を削ることで生まれます。吹割の滝付近から約1.5キロメートルにわたって分布しており、直径2〜3メートルのものが多く、最大では6〜7メートルに達するものもあります。

自然の力によって長い時間をかけて形成されたこれらの地形は、地質学的にも非常に貴重な存在となっています。

龍宮に通じる滝壺の伝説

竜宮の椀伝説

吹割の滝には、古くから語り継がれてきた不思議な伝説があります。それが「竜宮の椀(わん)」の伝説です。

昔、村で祝儀や祭りがあるときには、滝壺にお願いの手紙を投げ入れると、翌日には必要な数の膳や椀が岩の上に置かれていたといわれています。村人はそれを使った後、三日以内にお礼の手紙とともに元の場所へ返していました。

ところがある年、借りた椀のうち一組を返し忘れてしまいました。それ以来、どれほど願っても竜宮から椀を借りることはできなくなったといいます。

この物語は、日本各地に伝わる「椀貸伝説」の一つと考えられており、吹割の滝の神秘的な雰囲気をさらに深めています。

浮島観音堂と歴史

平安時代に創建された観音堂

渓谷の途中には浮島観音堂があります。記録によると、この観音堂は平安初期の延暦14年(795年)に創建されたと伝えられています。その後、室町時代の文明8年(1469年)に本尊が再興され、天文3年(1534年)には御堂が再建されました。

名匠・左甚五郎の伝説

観音堂には浮島如意輪観音が安置されています。この像は、日光東照宮の「眠り猫」を彫ったことで知られる名匠左甚五郎の作と伝えられています。

観音像はもともと白木彫りでしたが、明治時代に金箔が施されました。戦時中の空襲からも奇跡的に焼失を免れ、現在も大切に保存されています。

観光の楽しみ方

吹割の滝を訪れた際には、まず遊歩道を歩きながら渓谷全体を巡るのがおすすめです。滝の近くから眺める迫力ある景色と、観瀑台から見下ろす壮大な景色の両方を楽しむことができます。

また、滝を見学した後は近くにある老神温泉に立ち寄るのもおすすめです。自然豊かな山あいの温泉地で、旅の疲れをゆったりと癒すことができます。

アクセス

自動車

関越自動車道沼田ICから国道120号を尾瀬方面へ進み、約25分(約16〜20km)で到着します。

公共交通機関

JR沼田駅から関越交通バス(鎌田行き)に乗車し、約45分で「吹割の滝」バス停に到着します。バス停から滝までは徒歩約3分です。

見学情報

見学時間

自由見学(遊歩道は夜間通行止め)

冬季閉鎖

例年12月中旬〜3月下旬は積雪のため遊歩道が閉鎖されます。

観覧料

無料

駐車場

吹割大橋付近に無料駐車場(約10台)があります。周辺のドライブインにも有料・無料の駐車場があるため、利用時に確認するとよいでしょう。

自然と伝説が織りなす群馬の名勝

吹割の滝は、長い年月をかけて自然が作り上げた壮大な景観と、古くから伝わる神秘的な伝説が融合した魅力あふれる観光地です。滝の迫力ある水流、奇岩が連なる渓谷、歴史ある観音堂など、訪れる人々を飽きさせない見どころが数多くあります。

また、周辺には老神温泉などの温泉地もあり、滝の観光と合わせてゆったりとした時間を過ごすこともできます。四季ごとに異なる美しさを見せる吹割の滝は、何度訪れても新たな感動を与えてくれる、日本を代表する自然景勝地の一つといえるでしょう。

Information

名称
吹割の滝
(ふきわれ たき)
リンク
公式サイト
住所
群馬県沼田市利根町追貝
電話番号
0278-23-2111
営業時間

自由
※遊歩道は夜間通行止め

定休日

例年12月中旬~3月下旬は冬季閉鎖

料金

無料

駐車場
10台 無料駐車場
アクセス

JR沼田駅から鎌田行きバス45分「吹割の滝」下車 徒歩約3分(220m)

関越自動車道 沼田I.C.から国道120号線を尾瀬方面へ直進約25分(約16km)

尾瀬・沼田

群馬県