迦葉山 龍華院は、群馬県沼田市に位置する曹洞宗の寺院です。この寺院は、沼田市北部にそびえる迦葉山の中腹に鎮座しており、正式には「迦葉山 龍華院 弥勒護国禅寺(かしょうざん りゅうげいん みろくごこくぜんじ)」という名で知られています。しかし、一般的には「迦葉山」として広く親しまれています。
迦葉山参りには独特の習わしがあり、最初の年に参拝者は中峰堂から天狗面を借りて帰ります。次に参拝する際には、前回借りた面と新たに門前の店で購入した面を寺に納め、再び別の面を借りるという伝統が続けられています。
迦葉山龍華院は、848年(嘉祥元年)に桓武天皇の皇子葛原親王の発願により、天台宗比叡山の円仁を招いて創建されたと伝えられています。創建当初は天台宗の寺院でしたが、1456年(康正2年)に曹洞宗に改宗されました。その後、徳川初代将軍の祈願所として御朱印百石、十万石の格式を許され、格式高い寺院としての地位を確立しました。
迦葉山龍華院には、天狗にまつわる伝説が数多く残されています。寺院が曹洞宗に改宗された際、天巽禅師が改宗開山したと伝えられ、その高弟に中峰尊という僧がいました。中峰尊は、山門の岩屋や険しい岩山など、人力では到達できない場所まで修行者を導く神通力を持っていたと言われています。また、彼の童顔は生涯変わることがなかったとされています。
天巽禅師が二世大盛禅師に住職の座を譲った際、中峰尊は「吾れ迦葉仏の化身にて巳に権化化業は終わった。よって今後は永くこの山に霊し、末世の衆生の抜苦与楽せん」と誓願し、案山峰から昇天したと伝えられています。その後、彼の姿は消えましたが、天狗の面が残されたと言われています。
中峯堂には、戦勝祈願や交通安全祈願として奉納された「大天狗面」と「交通安全身代わり大天狗」が安置されています。特に「大天狗面」は、日本三大天狗の一つとして数えられ、その威厳ある姿で多くの参拝者の信仰を集めています。
坐禅堂は、普段は研修道場として使用されており、1983年(昭和58年)に沼田青年会議所より奉納された「諸願成就大天狗」が安置されています。この天狗面は、沼田まつりの際に御輿として出御し、地域の伝統行事において重要な役割を果たしています。
迦葉山龍華院は、その深い歴史と天狗伝説、そして曹洞宗の修行の場として、多くの人々に敬愛されています。独特の参拝習わしや、境内に安置された大天狗面は、寺院を訪れる人々に深い印象を与え、その霊験にあやかりたいと願う参拝者が絶えません。この寺院は、単なる観光地としてだけでなく、信仰の場としても重要な存在であり、地域の文化や伝統を今に伝え続けています。