老神温泉は、群馬県沼田市利根町に位置する歴史ある温泉地です。片品川が形づくった深い渓谷沿いに広がり、四季折々の自然に囲まれた静かな環境の中で、ゆったりと湯浴みを楽しむことができます。
古くから「脚気川場に瘡老神(かっけかわばにかさおいがみ)」といわれ、特に皮膚病や腫れ物に効く湯として知られてきました。湯治場としての歴史も長く、多くの人々がこの地を訪れ、湯の恵みに癒やされてきました。
老神温泉には現在8つの源泉が確認されており、かつては15本、毎分1,150リットルもの豊富な湯量を誇っていました。代表的な泉質は単純温泉で、源泉温度は約61.5℃。肌あたりがやわらかく、すべすべとした感触が特徴です。
効能としては、乾燥性皮膚炎(アトピー)、慢性関節リウマチ、筋肉痛、神経痛、神経炎、創傷、じん麻疹などが挙げられ、古くから「皮膚の湯」として親しまれてきました。
老神1号泉、3号泉、5号泉、7号泉、8号泉、10号泉のほか、観音薬湯や若乃湯3号泉など、それぞれ泉質や温度が異なります。単純硫黄温泉やアルカリ性単純温泉などもあり、宿ごとに引湯される源泉が異なるため、宿泊施設ごとに微妙な湯の違いを楽しめるのも魅力です。
近年は宿泊施設数が減少した一方で湯量は変わらないため、1軒あたりに供給される湯量が増え、「湯質が良い」と温泉通の間で高く評価されています。
皇海山や日光白根山などの雄大な山々に囲まれた、自然豊かな環境にあります。片品川の清流沿いに旅館やホテルが立ち並び、四季折々の風景とともに、静かで落ち着いた時間を過ごすことができる温泉地として親しまれております。
温泉街は利根町老神・穴原・大楊にまたがり、川や田園風景に囲まれたのどかな雰囲気が広がります。昭和10年に老神温泉・穴原温泉・大楊温泉が組合を結成し「老神温泉郷」と命名されました。
最盛期の昭和58年には22軒の宿が軒を連ねましたが、現在は約13軒。全国的な知名度は草津や伊香保ほど高くありませんが、その分混雑が少なく、落ち着いた時間を過ごせる穴場の温泉地です。
宿泊者の約99%以上が日本人であり、静かな環境の中で純粋に温泉と自然を楽しみたい方にとって理想的な場所といえるでしょう。
老神温泉最大の行事が、毎年5月第2金曜日・土曜日に開催される「大蛇まつり」です。長さ108メートル、重さ約2トンの巨大な大蛇が温泉街を練り歩く姿は圧巻で、200人以上の担ぎ手が参加します。夜店も並び、温泉街は熱気に包まれます。
毎朝6時から7時30分まで開催される名物の朝市は「関東一」とも称されます。地元の新鮮な野菜や山菜、味噌、漬物、草餅などが並び、素朴な山里の味と温かな人情に触れることができます。
節分祭や冬の花火、びっくりひな飾り、ポピーまつり、納涼花火大会、そば祭りなど、年間を通して多彩なイベントが開催され、訪れる人々を楽しませています。
老神温泉の名は、壮大な神話に由来すると伝えられています。かつて、上野国(現在の群馬県)の赤城山の神と、下野国(現在の栃木県)の日光・二荒山の神が、神域を巡って戦場ヶ原で激しく争いました。
老神温泉の伝承では、赤城山の神は大蛇、二荒山の神は大百足に化身したとされています。激戦の末、矢傷を負った赤城山の神は赤城山麓まで逃れ、地面に矢を突き立てました。すると、その場所から温泉が湧き出し、その湯に傷を浸すとたちまち癒えたといわれます。そして再び立ち上がった赤城山の神は、二荒山の神を追い返しました。
この「追い神(おいがみ)」が転じて「老神」となったとされ、現在の地名と温泉名に受け継がれています。
温泉街を流れる片品川を挟み、東側には二荒山神社、西側には赤城神社が鎮座しています。伝説の舞台を今に伝える存在として、地域の人々に大切に守られています。
老神温泉は、日本を代表する自然景勝地尾瀬への玄関口でもあります。尾瀬シーズンには「老神温泉尾瀬ハイクバス」が運行され、鳩待峠まで直行できる便利な交通手段として人気を集めています。尾瀬ハイキングの前後に宿泊することで、心身ともにゆとりある旅が実現します。
温泉街からほど近い場所にある吹割の滝は、「東洋のナイアガラ」と称される名瀑です。独特の地形に沿って豪快に流れ落ちる様子は迫力満点で、遊歩道や観瀑台から安全に見学できます。例年冬季は閉鎖されますが、春から秋にかけては多くの観光客が訪れます。
JR上越線・沼田駅からバスで約40分、関越自動車道・沼田ICから車で約30分と、比較的アクセスも良好です。一部の宿泊施設では駅からの送迎サービスも行われています。
老神温泉は、神話に彩られた歴史と、豊富な湯量を誇る名湯、そして四季折々の自然が調和した温泉地です。華やかさよりも静けさを大切にし、心からくつろげる時間を提供してくれます。
やわらかな湯に身をゆだね、渓谷の風景を眺めながら過ごすひとときは、まさに贅沢そのもの。尾瀬や吹割の滝など周辺観光とあわせて、ぜひ一度訪れてみてはいかがでしょうか。
老神温泉は、訪れる人の心と身体をやさしく包み込む、群馬県が誇る隠れた名湯です。
JR上越新幹線・上毛高原駅より路線バス(関越交通)で約70分間
JR上越線・沼田駅より路線バス(関越交通)で約50分間
沼田ICから車で25分