「分福茶釜」という有名な狸にまつわる説話で知られている寺院です。静かな名刹であり、山門をくぐると巨大な狸の像が迎えてくれます。
参道には信楽焼きの21体のたぬきの像が配置されています。本堂の前にはシダレザクラや、樹齢約600年のラカンマキの巨木があります。
本堂には分福茶釜が安置されており、見学することができます。この茶釜は紫金銅で作られており、容量は1斗2升(約21リットル)です。形状は真形で、周囲は4尺(約1.2メートル)、重量は3貫(約11.2キログラム)、口径は8寸(約24センチメートル)です。元々の蓋は失われており、現在は新たに作られた蓋が使用されています。
さらに、「狸コレクション」と呼ばれる展示では、日本各地の狸にまつわるグッズや剥製などが見られます。
開山は応永33年(1426年)、美濃国土岐氏の出身の大林正通禅師によって創建されたとされています。大林正通は各地を巡りながら上野国を訪れ、伊香保山麓で後に茂林寺に分福茶釜をもたらした老僧守鶴と出会いました。
その後、寛永十九年(1642年)には徳川家光から二十三石四斗余の朱印を授かったと伝えられています。
境内には歴史ある建造物も多く、入り口に位置する総門(通称 黒門)、本堂は応仁2年(1468年)に建立されました。また山門(通称 赤門)は元禄7年(1694年)に建立されています。
毎年4月には「狸桜祭」というイベントが開催されています。岩佐鶴丈の薩摩琵琶演奏や講談、舞踊などが披露され、先着100名には餅が振る舞われます。
また、隣接する「茂林寺公園」は、茂林寺沼、低地湿原、蛍の里などから成る公園です。
公園内では野鳥観察や芝桜など、さまざまな植物観察が楽しめます。公園内にはたくさんのたぬきのオブジェがあり、その可愛らしい姿が心を癒してくれます。周辺は茂林寺沼を中心に公園が広がり散策も楽しめます。
分福茶釜には「ぶんぶく茶釜」としてのお伽話と「分福茶釜伝説」としての伝説の二つの説話が存在します。
茂林寺に伝わる伝説によれば、文福茶釜の持ち主は実際には貉や狸であり、狸が茶釜に変身することはなかったとされています。
茂林寺の釜は、松浦静山の随筆『甲子夜話』に登場する話で、化け狸の話として知られています。この話は、昔話『分福茶釜』の元になったとされています。
物語の内容は次の通りです。
応永年間のころ、上州(現在の群馬県)に茂林寺という寺がありました。その寺には守鶴という優れた僧がいました。
彼は不思議な釜を使ってお茶を振る舞うことができ、その釜にはいくら湯を汲んでも尽きることがありませんでした。
守鶴は茶釜を「紫金銅分福茶釜」と名付け、福を分け与えるものとしました。
ある日、他の僧が守鶴の昼寝をのぞいてみると、なんと守鶴の股から狸の尾が生えているのを目撃しました。実は守鶴の正体は狸であり、しかも何千年も生きている長寿の狸でした。
彼はかつてインドで釈迦の説法を聞き、その後中国を経て日本にやって来たのです。そして、不思議な茶釜も実は狸の術によるものであったのです。
自分の正体が知られたことで、守鶴は寺を去ることを決意しました。最後の別れの日に、守鶴は幻術を使い、人々に源平合戦の屋島の戦いや釈迦の入滅の様子を見せました。
この話を基にして、昔話の『分福茶釜』が創作されたと言われています。
9:00~16:00
火曜・水曜・木曜
境内参拝自由
宝物拝観料
大人 300円
子ども 150円
東武伊勢崎線「茂林寺」駅りおよそ徒歩10分
東北自動車道「館林」ICよりおよそ15分